環境保全フォーラム2017が開催されました。

[ 活動報告リポート ]

【2017/02/19】 環境保全フォーラム2017が開催されました。

環境保全フォーラム2017 『環境保全フォーラム2017~熊と踊れ、鰐と歌え!~』が開催されました。
今回のゲストは...直木賞作家の江國香織氏と、子どもの本専門店『メリーゴーランド』店主の増田喜昭氏でした。
お二人は旧知の仲で、江國氏の小説家デビューの頃から、実に30年来のご友人だそうです。

開催当日、会場に詰めかけたのは約120人のお客様のほか、新聞やケーブルテレビの報道陣でした。
阿吽の呼吸であるお二人からどんなお話しが飛び出すのか?...来場者の期待が自然と高まります!
今回は二部構成になっていて、第一部はゲストお二人のトーク。第二部は江國氏、坂東園長、あべ弘士氏、旭山動物園くらぶの森理事長の4人で行われるディスカッションでした。どちらも内容が盛りだくさんでしたが、そのエッセンスだけでも伝わるようにリポートします!

<第一部:熊と踊れ、鰐と歌え!>
刺激的なタイトルが付けられている第一部。まずは命名した増田氏によるタイトルの説明から始まりました。

環境保全フォーラム2017

環境保全フォーラム2017 環境保全フォーラム2017

増田「"熊と踊れ"っていうのは同名の小説『熊と踊れ』から来ました。これは江國さんが面白いって言う本で、その通り外さないんですよ。」
江國「私は書くよりも読む方が得意なんで...(笑)」

小説『熊と踊れ』は、増田氏にとって"衝撃の一冊"だったようです。
暴力を振るう父の元に生まれた三兄弟が銀行強盗を重ねていくお話で、これを読んだ増田氏は「子育てって何かな?」「家族って、兄弟って、友達って何だろう?」と想いを巡らせたのでした。

増田「"鰐と歌え"っていうのは『年をとったワニの話』という絵本から来ています。」
増田氏とお子さんが小さい頃から大好きだというこの話は"心温まる優しいお話"ではなく"残酷でズルいお話"でした。この体験も増田氏に驚きと発見をもたらしたようです。

環境保全フォーラム2017

環境保全フォーラム2017 環境保全フォーラム2017

江國氏も小さい頃に印象に残ったのは"残酷な悲しい話"でした。『泣いた赤鬼』と『幸福な王子』を挙げ、"悪者が居ないのに悲しいお話"と紹介しました。これらの作品は「好きというよりも、どうしたら良いか分からなくなった話」で、ずっと心に残っていたと続けます。大人になってから独自の結論に達した江國氏ですが、そこに一つの発見があったようです。

増田「子供の本屋を長年やってるけど、世間の大人たちは"こうなって欲しい"という想いを絵本に乗せて買い与えてますよね。でも僕は"答えの無い曖昧な話の方が面白いぞ!"という意見を持っているんです。子供を幸せにするなら本をたくさん読ませるべきだと思ってます。"幸せ"って"想像力"の事だと僕は思うんですよ。江國さんの様に"何で赤鬼は泣いたんだろう?""王子は何が幸福なんだろう?"という想い持つ事が重要だと思うんです。その方が"物語を生きる"事に近付ける気がするんです。」

タイトルの説明にもあった小説『熊と踊れ』は、教育者から見れば「こんな話は子供の教育に良くない!」と言われそうな本ですが、増田氏は「悪いためには頭が切れる事が重要で、野生を働かせ、時にズル賢く立ち回り、"熊と踊れる程の覚悟"を持って生き抜く三兄弟が描かれている。」と語ります。そして江國氏も「別に銀行強盗だからという話では無いんです。どうしても理屈では超えられない事を"熊と踊る"気持ちで乗り越える。そんな人生訓が詰まった本なんです。」と続けました。

普段は小説なんてほとんど読まない私でも、お二人の話を聞いていると本を読みたくてウズウズするのが分かりました。紹介された本も当然ですが、図書館や書店での"出会い"があるのではないかとワクワクする気持ちが湧きあがって来ました。たぶん、来場された方達も同じ気持ちになっていたと思います。

さらに私達の"良い本"観を崩す言葉が次々と飛び出して来ました。お二人の想いは止まりません。

環境保全フォーラム2017

江國「さっきの増田さんの話にもありましたが、勧善懲悪みたいな分かりやすい話は昔話の中なら良いと思うんですが、現代の作品が"こうすれば幸せになる"とか"こうしたらダメ"みたいな本ばかりになると、子供ばかりか大人も信じちゃうから"正解が無いと動けない"人間になってしまう。だったら熊と踊れなくなる。」

増田「いわゆる"良い本"を持ち上げる最近の絵本ブームには本当にウンザリしてるんです。それを読み聞かせるのも流行っちゃって...。子供は勝手に読むんですよ。大人が勝手に"良い本"と思い込んだ物を、子供に押し付けてる気がしてならない。良い意味の"子供を放っておく"が出来てない。」

江國「言葉があるから分かると思っちゃうんですよね。例えば親子が"話せば分かる"と。大切な事は言葉で伝えなきゃいけないって。でも飼育員さんは"話せば分かる前提なんて無い"という環境で動物達と向き合ってる。言葉で伝わらない部分は必ずあって、それは人間に残された野生の部分でもあると思うんですよね。」

増田「飼育員さんは凄い。言葉の通じない動物達と向き合って、考えている事や好きな物を探っている。でも、人間は自分の子供を見ていない。分からない。なのに自分が見ていない事にも説教をする。警察の尋問みたいに。」

環境保全フォーラム2017

お二人は"言葉の力が失われつつある"事を感じられており、人が"分かりやすい方へ流されている"事に危機感を持っていらっしゃいました。マスコミや他人の評価に誘導され、自分自身で何かを選んだり考えたりする力が弱くなっていると危惧されていました。それは"疑いを忘れている"事でもあると。自分で実際に考えたり体験せずに何かを信じる事は動物の世界ではありえない話だが、人間は言葉があるために信じてしまう...。言葉を大切にし、言葉を愛するお二人ですが、ある部分については"言葉が無い方が豊かな事もあるだろう"と語りました。

ITやコンピュータが大好きな私の中に、仮想現実や莫大な情報は必ずしも幸せにつながる物ではない...そんな気持ちが湧き上がりました。

環境保全フォーラム2017

第一部の最後には、来場者へお二人からお言葉をいただきました。
「熊と踊れ、本を見たら買え。」...これが何を意味するのか?詳しくは会報の発行をお待ちください!

<第二部:ディスカッション>
休憩を挟んだ後は、4人の出演者によるディスカッションが始まりました。
テーマは「旭山動物園の50年のあゆみ」です。
環境保全フォーラム2017

森理事長が次々にスクリーンに画像を映します。旭山動物園の古いポスターや写真が表示される度に出演者がコメントを付け加えます。特に昔を良く知っている"元・飼育員"のあべ弘士氏や坂東園長からは、実に多くのお話が飛び出してきました。

環境保全フォーラム2017

森「ライオン...たくさん居たんですか?」
あべ「沢山生まれたんだけど、檻が狭いから入りきらなくて他にやっちゃったんだよね(笑)」

環境保全フォーラム2017

坂東「昔はマサイも居たんですよね。」
あべ「うん、マサイキリンね。」
森「あそこに居るのはあべさんなんですよね?」
あべ「どれ?真ん中に居るの?あぁ(笑)」
江國「若いですねぇ...」(会場、感心する声と笑いが入り混じる)
あべ「ほんとに...(笑)」
江國「これ、キリン小さいですね。可愛い。」
あべ「生まれたばかりでね。お母さんが育てなかったんじゃないかな。」

環境保全フォーラム2017

森「これもあべさん写ってるんですね?」
あべ「そうそう、俺と小菅さん(前園長)だね。これハスキー犬?」
坂東「違うっぽいですね。」
森「写真だけあって資料が無いんで、何が何やら分からない状態で(苦笑)」(会場、笑)

そうなんです。写真は色々と見つかったんですが、それに対応する資料が無くて手さぐりの解説が続きます。
しかしそこは経験者。段々と昔の記憶がよみがえって来たのです!

環境保全フォーラム2017

あべ「これ菅野さん(前々園長)?あれ?これ植村直己さん?」

実は...1976年に北極圏の1万2千キロを犬ぞりで踏破した植村直己さんが、旅を共にしたハスキー犬4頭を北海道の動物園(旭山動物園と帯広動物園)に贈った時の写真だったんですね。何とも歴史的な出来事に、会場を感嘆の声が包みます。

環境保全フォーラム2017

あべ「これ菅野さん(前々園長)?あれ?これ植村直己さん?」

ある時期、旭山動物園には遊具施設がたくさん設置されていました。入園者を増やすための方策として、飼育員は動物園としての充実を希望しましたが、実際には大型遊具の充実で人を呼ぼうという結果になってしまったと、あべ氏によって説明がありました。

あべ「その年は人が来たけど、次の年からは音がうるさいだけだったね。」
江國「動物達もビックリしたでしょうね...。」
あべ「ジェットコースターもうるさくてね...一度も乗った事ない。意地でも。」(会場、笑)
坂東「そうですね。自分も一切乗ってないです。」(会場、さらに笑)

あべ「今もそうだけど、旭川には遊園地が無かったからね。そういう物を望む時期ってのはあったね。ただ...動物園の中ってどうかと思ったけど。」
坂東「4月29日に夏季開園したら一気に遊園地に人が行っちゃって、動物の所はガラガラで...あれは悔しかったですよ。」
お二人の当時のやり切れない想いが伝わって来ました。

環境保全フォーラム2017

他にも様々なエピソードが語られましたが、ヒグマの引っ越し騒動(大きくて檻から出せない→麻酔かける→檻を壊してヒグマ出す→麻酔かかり過ぎて死にそう→麻酔弱める→トラックの荷台でヒグマ起きる→飼育員必死で押える→実は全て開園中の出来事)では、会場に驚きの声と笑が交互に湧き起りました。

環境保全フォーラム2017

どれも50年という長い歴史に起きた出来事のほんの一部です。それを少しだけでも知る事が出来たのは、とても貴重な体験となりました。危機的な状況を迎えた旭山動物園が行動展示の実現により奇跡とも呼べる復活を果たしたのは有名な話ですが、それだけが旭山動物園の歴史ではないという事がよく分かり、もっと身近に旭山動物園を感じられるようになったと思います。

<環境保全フォーラムを終えて>
今回も出演された方々のお話によって様々な刺激を受ける事が出来ました。第一部の江國氏・増田氏のお話からは本の魅力や言葉の持つ力について改めて考えるキッカケを頂きました。そして第二部の坂東氏・あべ氏のお話からは旭山動物園が現在に至るまでの歴史を、我々が初めて知るエピソードで大変興味深く紹介して頂きました。

環境保全フォーラム2017

環境保全フォーラムはこれからも様々な視点で動物や環境について考えるキッカケ皆さんに伝えるため、充実した企画を提案して参ります。今回は参加出来なかった方も、次回は是非ご参加して頂けるように頑張ります!堅苦しい勉強ではなく、楽しくてタメになる体験を提供しますので宜しくお願いします!!

投稿者:旭山動物園くらぶ

← 前のページに戻る